【目良浩一の米西海岸リポート(6)】 グレンデール市の慰安婦像の撤去を求める裁判は、自分たちで弁護士の役も務めます

産経ニュース 平成28年(2016年)12月28日
http://www.sankei.com/world/news/161228/wor1612280002-n1.html

前回の報告では、連邦控訴裁判所(第9地区控訴裁判所)が、われわれの裁判の控訴状に対し、原告の資格は認めたが、米カリフォルニア州グレンデール市の行為が米国の憲法に違反するとは認められなかったことをお知らせしました。同時に、連邦控訴裁判所に「再審査」の請求をすることまでを書きました。再審査の請求は9月13日に提出しました。

 さらに今回は、申請に力を添えるために、日本の二つの組織がアミカスと称する支援資料を提出してくれることになりました。「史実を世界に発信する会」と「日本近現代史研究会」です。これらの組織は、米国ではあまり知られていない慰安婦の実態を二つの方法で、裁判官に知らせることを狙いました。一つは、日米の学者による慰安婦の実態に関する議論です。米国の学者が、慰安婦を安易に「性奴隷」と考える傾向があるのに対し、日本側が歴史的事実を挙げて「性奴隷説」に反論した記録です。もう一つは、第二次大戦中の米軍の記録や米国政府内の徹底した調査の結果として、日本軍が人権の侵害をしていなかったという米国政府の報告です。ほかに日本での調査も含めて、「性奴隷説」を徹底的に否定した資料です。

 二つのアミカスは9月26日に提出されました(*)。10月4日には、第9地区控訴裁判所が受理しました。われわれは明るい気分になったのですが、直後の10月13日に再審査請求が却下されたとの通知を弁護士から受けました。再審査請求は第9地区控訴裁判所の判事全員29人に通知されていますので、誰もそれを採択しようとしなかったのは意外でした。日本政府の口添えのない裁判は、このように扱われるのです。この件については、米国の最高裁判所に持ちこむ以外には手がありません。90日以内に上訴することができます。

■ 続いて加州の控訴裁判所がグレンデールを支持

 その対応を考えていた11月23日、米国での感謝祭の前日に、カリフォルニア州の控訴裁判所からの判決がメールで来ました。カリフォルニア州の裁判では、憲法違反のほかに、市議会で碑文を承認していないこと、日本人や日系アメリカ人を差別したという訴因も入っています。しかし、大きな問題としては、グレンデール市側が起こした濫訴に対する当方への罰金支払い義務を覆すことがあります。これらのすべてについて、弁護士は楽観していたのですが、われわれは敗訴しました。

 この控訴裁判の主任判事は、8月の公判の時に「俺は東條が嫌いだ、他の人もそうだ。嫌いな人たちを差別して何が悪い」と発言したポール・ターナーです。そして、他の2人もそれに賛成した全員一致の判決です。考えられない判決です。判決は、裁判所はどのような事情であれ、自由自在に裁定できるのであると、宣言しているようなものです。すなわち「グレンデール市の行為は政治的な意図の表現なので、公共の目的の例外としては扱えなく、濫訴が成立する」としているのです。しかし、濫訴の法律は、弱い個人の利益を守るために作られたものなのです。グレンデールのような大きな自治体に与えるべきものではありません。憲法違反については、連邦裁判所の決定を引き継いでいます。碑文の文言を承認していないことに関しては、「そんな詳細を審議する必要はない」と決めつけています。差別については、勝手に「差別はなかった」と断定しています。また、第1審の判事が原告に断りなしに、慰安婦像を視察したことに関しては、「それは違反かもしれないが、判決に影響を与えるものではない」と勝手に決めつけています。すなわち、先に結論があって、それに合わせて判決文を書いたといった感じです。偏向性の強い判決だと思います。

■ 弁護士への依存から、自主的な上告訴状の作成へ

 そこで、州の裁判についても、連邦の裁判についても、今後続けてゆくには、かなりの費用が必要です。しかし、現在の状況では、当初のような支援金の収入は期待できませんし、支援していただいている皆様にも、限度があります。そこで、支援者からの提案もあって、原告が自力で裁判を続けることを考えました。そのような発表をすると、弁護士の方からある程度の無償協力や、低額報酬での協力を申し出てくる人も出てきて、現在では、原告が主体となって、特定の件については弁護士の助言をいただいて進める形にしています。この形態で、州の控訴裁判所への再審査請求書を作り、締め切りの12月8日に提出しました。締め切り間際に提出して、一旦受け付けられましたが、11日になって、いくつかの手続き的な手違いがあるので、16日までに、再提出するように申し渡されました。素人の手違いを許してくれるのには、救われます。

 再審査請求書は、原告側の私と「歴史の真実を求める世界連合会」(GAHT)の細谷氏の2人で主に作成し、特定の点について弁護士の助言を得ながら修正してきたものですが、ポイントをかなり正確に押さえていると思っています。したがって、ターナー判事も苦慮すると思ったのですが、なんと1週間後に却下の通知が来ました。面倒なものは、大急ぎで読んで、排除するようです。これに対しては、40日以内に州の最高裁判所に上告できますので、そうするつもりです。

■ 米国の最高裁に向かって進む

 次の課題は、1月11日期限がくる米国の最高裁判所への上告状の作成です。この裁判所は、控訴裁判所の裁定を不満とする人などからの上告を受け付けるのですが、提出された件数の1パーセントくらいしか採択しません。採択の基準は、下級裁判所の裁定間の相互一貫性を保つことです。ある裁判所で出した論理が、別の裁判所では通らない場合には、その論理が通るように修正するという役割です。われわれは、以前に同じ第9地区控訴裁判所で決定されたカリフォルニア州の判例を使って、グレンデール市の行為が憲法違反であることを主張する予定です。

 この上告状についてもわれわれは、われわれが主体となって行い、弁護士には時々の助言を得るだけで、書き上げる予定です。果たしてどのような結果になるかわかりませんが、これが現在できる限りの状況です。上告状の提出は、首都ワシントンに出かけて行うつもりです。

以上

(*)米国連邦控訴裁判所が受理した性奴隷を否定した意見書